「お疲れ様でした」は、まだ言いません。
9月12日(土)
本日はニュース担当。昼に地震もあり、ちょっとバタバタしました。少し落ち着いてパソコンを広げると
さみしいニュースが飛び込んできました。楽天イーグルス渡辺直人選手の「今シーズン限りでの引退」です。
ついにこの日が来たか・・・率直にそう思いました。
正直に申し上げます。プロ野球選手として、ものすごい記録、恵まれた体格があるわけではありません。
身長173センチ 体重73キロ がっちりはしていますが、そんなに大きな体ではありません。
高校は地元の公立高校。もちろん甲子園出場なし。大学でも頂点に立つことはありませんでした。ドラフトも5巡目。上位で指名された訳ではありません。
1134試合出場 853安打 打率.259 7本塁打 115盗塁
1000試合出場 100盗塁と節目の数字はクリアしましたがまだまだ上はいます。
しかし、私は思います。ファンにこれだけ愛される選手もなかなかいません。
もちろん、守備でも打撃でも「いぶし銀」という言葉が似あうプレーヤー。
でも、「人柄」がファンに伝わっている。これは大きいと思います。
。球団創設3年目で楽天入団。今はコロナの影響でそうはいきませんが、とにかくどんな時もファンに丁寧に、しかも笑顔で対応していたのが渡辺選手でした。
球団が心配して少し止めようとしても、「ファンが喜んでくれるなら」とそのスタイルを保ち続けました。
トレードになって仙台に交流戦で帰ってきたとき、楽天戦なのに相手チームの渡辺選手に送られた大歓声を、私は忘れることができません。
そして、仲間にこれだけ愛される選手もなかなかいないかと。
去年、怪我で離脱した直後、連敗が始まったのは覚えている方も多いかと。平石監督も渡辺選手の存在の大きさを会見で何度か口にしていました。
スタメンで出ているわけではないのです。ベンチからの「声」でも、ともに戦っているのです。
「点を取られてがっかりしてベンチに戻ってきても、なぜか直人さんの声で、まだいけるんじゃ?という気持ちになるんです。」実際に聞いた声です。
本人に聞くと「そんな大したこと、言ってないよ。」と笑っていましたが。
さらに、これだけ報道陣に愛される選手もなかなかいないと思います。
負ければどんな選手でも「口は重い」ものです。しかし、そんな中、渡辺選手はどんな試合でも質問が無くなるまで答え続けます。
これも一度、聞きました。「負けた時、しゃべりたくないこともあるでしょう・・・。」と。
でも、彼は言いました。
「マスコミの方も、春のキャンプからずっと一緒にいるわけじゃないですか。だから僕は共にに戦ってくれていると思っています。
戦ってくれる仲間に聞かれたら、僕は思ったことを話します。」と。
私も実況する上で、いろいろなことを教えてもらいました。
「拓さん、当たり前のプレーを当たり前にやるって、意外と難しいんですよ。もちろんいろいろな局面がありますけど
例えば、送りバント。できて当たり前。そう思われがちですが、そうでもないよ。対応が難しい変化球に緊張・・・。
だからこそ、1球でしっかり決めた時は放送ですばらしさを伝えてほしい。」と。
選手の心理面、細やかな走塁面、私が個人的に最も野球を教わった現役選手かもしれません。
最後に。
渡辺選手には、達成間近の珍しい記録があります。実はあと1つで通算100死球(デッドボール)です。
実はこの記録、達成しているのは王さんはじめ、強打者ぞろい。内角を厳しく責められるからです。
渡辺選手の場合も、しぶといバッティングが武器でもありますが、
「何が何でも塁に出る」
その気持ちから、どんなボールにも立ち向かってきたから・・・私はそう思っています。
「100死球、達成したら実況で『おめでとう!』も変だよね?」と聞きましたら
「めでたいか、めでたくないかといったら・・・めでたいかもね(笑)。これも俺の証だから、おめでとう!って言っていいですよ」と。
そうはいっても、もし、こんな場面になったら・・・。ちょっと考えておきます(笑)。
ただ、まだ「お疲れ様」はいいません。
今シーズンで引退ですから、今シーズンが終わったら「お疲れ様でした。」という思いを伝えたいと思います。
その為にも、今季は異例のシーズンではありますが、少しでも長いシーズンになってほしい。すなわち、それは「優勝」です。
もうちょっとだけ・・・現役、頑張ってください!!直人選手!!