楽天イーグルス アーカイブ②
今回は、選手編です。どの選手にもお世話になっていますが、取材で野球を教えてくれた選手に関してです。順不同で。
吉田豊彦投手(2005~2007年)
楽天創設時、左の中継ぎとして投げまくりました。入団時39歳。当時ソフトバンクにいた
大道選手と最後の「南海ホークス」を知る選手でした。投げなくても毎日のように、肩を作る中継ぎ投手。
とにかく大変ですが、どの球団でもブルペンを支える存在です。ある時、吉田投手に聞きました。
「ベテランになってもどうしてあれだけ投げられるのですか?」と。
一見すると強面な感じもする吉田投手ですが、取材で伺うと常に丁寧に答えてくださいました。
「プロ野球選手、特に投手はねえ、『股関節』ですよ。股関節が動けば何年でもできるよ。自分もここを鍛えています。
でもこれがいつの間にか固くなって可動域も狭くなり、怪我に繋がるんだよね・・・」と。
そこから、何気なく見ていた選手の試合前のアップ。私、見るところが変わりました。
吉田投手はじめ、ベテランほど入念に股関節回りを動かしています。プロ野球選手が地味にかつ、確実に鍛えている箇所・・・股関節です。
大ベテランの選手が登場したとき、ちらっと思い出してください。「ああ、この選手は股関節鍛えているから丈夫なんだな。」と
ボールを遠くに飛ばす。速いボールを投げるのがプロですが、そのためにも鍛えているはずです。
なんとなくご自身でもイメージしながら動いてみてください。「打つ、守る、走る」 必ずこの関節が動いていませんか?
芸能人は歯が命 アナウンサーは声が命 プロ野球選手は股関節が命
この推論、たぶん間違っていません(笑)。
高須 洋介選手(2005~2013年)
決して口数が多いタイプの選手ではありませんでしたが、誰に聞いても「職人」。
春のキャンプになると、若い選手が常に高須選手のそばにいました。現役だった平石前監督も高須さんのそばで練習していました。
当時入団2年目か3年目の平石選手も「めっちゃ、わかりやすいんです」と。
どちらかというと寡黙なイメージがあったので「どんな風に指導し、声をかけているのだろう?」と思い、
久米島のグラウンドで近寄れるところぎりぎりまで行ってみましたが、声までは聞こえなかったことを覚えています。
高須選手に若手のころ「プロの世界」を教わったと話してくれた選手がいます。
高須選手の打席の時、盗塁を試みスタートを切りました。しかし、スタートが遅れました。遅れた時は自分でも「しまった!」と思うそうです。
しかし、そんな時は高須選手は必ずファウルを打って失敗をカバーしてくれたそうです。
失敗を悟られないよう何食わぬ顔で1塁ベースに戻って「これがプロの世界なんだ」と感じたそうです。
プロの世界といえば、私の実況の時こんなことが。
解説の方が「いやらしいですね。おそらく今、高須、わざと空振りしましたよ。ストライク一個捨てても、
自分の狙っているボールを投げさせようとしているんですね・・・」と。空振りすればピッチャーは「あっ、このボール狙っていたんだ。では次は違う球種に」と
思うわけです。実はその「違う球種」を本当は狙っているわけです。でもストライクを一個捨てなければいけません。やはり技に自信がないとできないことです。
これは忘れません。
亡くなった野村監督がチャンスに強い高須選手を「必殺仕事人」と呼びました。
その極意ってどこにあるのか?聞きに行くと実にシンプルに教えてくださいました。
「この場面でやっちゃいけないこと。これを整理するだけですよと。」
三振してはいけない、ゲッツーになってはいけない、では「最低これだけはやればいいんだ」と頭を整理していくそうです。
絶対に打たなくては!ではなく、絶対にやってはいけないことをクールに整理する。
これは私の仕事にも生きています。追い込まれたと思う時ほど、最低限これだけやろう・・・と腹をくくる。
私も高須理論、実践しています。高須さんのように勝負強くはありませんが・・・。
また、余談ですが、球場でたまたま、他局の記者と私がゴルフ談義していました。私が「今度行きましょうよ」と他局記者に言いながら
私がゴルフのスイングをしている時、高須さんが通りました。その時何気なく言われた一言。
「右に球が出ていっぱいOB打っている感じがするねー」と。
ええ、高須さんその通りです。「職人」は野球だけでなくゴルフのスイングも見ただけでわかってしまうようで・・・(笑)
また次回